相続放棄をしたいのですが、気を付けるべきことは何ですか?

相続放棄の手続をする前に相続財産の「処分」をしてしまうと相続放棄できなくなるので注意が必要です。

 

次のケースが「処分」にあたるかどうか問題となります。

 

1 相続債務の弁済や相続財産をもってする相殺

被相続人に相続債務がある場合に、相続財産で弁済をしたり、相殺をすることが「処分」にあたるかどうかについては争いがあります。これについては「処分」にはあたらないとする見解と、「処分」にあたるとする見解があります。

相続債務を弁済したり、相殺しても、相続財産はトータルでは減少するものではないので「処分」にはあたらないとするのが妥当と考えますが、見解が分かれるところであり、無理に弁済や相殺はしないほうが良いと考えます。

なお、相続人が相続財産ではなく、自分の固有財産で弁済することは「処分」にはあたりません(福岡高裁宮崎支部平成10年12月22日決定)。

 

2 債権の行使

債権について、相続人が債務者に対し、請求・催告することは、時効中断(完成猶予)の効力があり、保存行為として「処分」にあたらないとされています。

一方、取立行為については「処分」にあたるとされています(最判昭和37年6月21日)。

 

3 葬儀費用や墓石購入費用の支払い

実務では、相続財産から支出した葬儀費用(仏壇や墓石の購入費を含む)が社会的に見て不相当に高額でない限り、「処分」にあたらないとされています。

 

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