亡き夫の愛人に対して遺留分侵害額請求は可能か?

1 そもそも愛人に相続権はあるのか?
法律婚の尊重: 現行民法では、婚姻届を提出している者に限って「配偶者」としての相続権を認めています(民法739条1項、890条)。愛人は、民法上の「配偶者」には含まれず、法定相続人になりません。
重婚的内縁の扱い:
仮に被相続人が法律上の妻と事実上の離婚状態にあり、愛人と事実上の夫婦関係(重婚的内縁)であったとしても、相続人となるのは法律婚の妻です。
受遺者としての立場:
ただし、愛人は遺言(遺贈)や死因贈与によって財産を受け取ることが可能です。この場合、愛人は「相続人」ではなく「受遺者」という立場で財産を取得します。
2 愛人に対して遺留分侵害額請求はできる?
請求の可否:
遺留分を侵害された配偶者や子といった相続人(遺留分権利者)は、贈与を受けた「受遺者」または「受贈者」に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求できます。愛人が遺贈等を受けている場合、その愛人は遺留分侵害額請求の直接の相手方となりますので、愛人に対して請求が可能です。
請求の内容: 平成30年の改正民法により、請求権の性質は「金銭債権」となりました。遺留分権利者は、遺産そのものの返還ではなく、侵害額に相当する金銭の支払を求めることになります。
行使の方法:
遺留分権利者は,まず,受遺者又は受贈者に対し,遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示をする必要があります。この意思表示をする時点では,遺留分侵害額を具体的に明示して意思表示を行う必要はありません。この請求権の行使の意思表示がされると,遺留分権利者の受遺者又は受贈者に対する,遺留分侵害額相当の具体的な金銭支払請求権(金銭債権)が発生します。そして,遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示は,訴訟上でも,訴訟外でも,行うことができます。通常は請求権の行使の意思表示をしたことを明確にするために内容証明郵便にて通知します。次いで,遺留分侵害額請求権の行使の意思表示によって新たに発生した具体的な金銭債権(受遺者又は受贈者の遺留分権利者に対する金銭債務)に基づき,受遺者又は受贈者に対し,金額を明示して,その支払を請求します。この金銭支払請求は,訴訟上でも,訴訟外でも,行うことができます。
権利の消滅:
遺留分侵害額請求権は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年で時効により消滅します。また相続開始から10年を経過した場合にも消滅します(10年は除斥期間)。
遺留分侵害額請求権の行使の意思表示によって新たに発生した具体的な金銭債権は、民法166条1項により,「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき(1号),又は,権利を行使することができる時から10年間行使しないとき(2号)」には,時効で消滅します。
3 愛人との間に子がいる場合はどうなる?
非嫡出子の相続権:
婚姻関係にない男女から生まれた子(非嫡出子・婚外子)は、父が「認知」することによって父子関係が生じ、相続権が発生します。認知されていない場合は、自然的血縁関係があっても父の相続権を有しません。そのため、愛人との間の子は父に認知されている場合にのみ、相続人となります。
相続分と遺留分: 認知された非嫡出子の相続分は、嫡出子(法律婚の妻との間の子)と同一です。また、子は兄弟姉妹以外の相続人であるため遺留分権利者にも該当し、嫡出子と同様に遺留分を有します。なお、婚外子の法的地位は次のようになっています。
・婚外子(非嫡出子)は,母の氏を称する(790条2項)。
・婚外子(非嫡出子)の親権者は,原則として母である(819条4項の反対解釈)。
・相続の局面では,被相続人に婚外子と嫡出子が存在する場合に,婚外子の相続分は嫡出子の相続分と同じです。
相続順位:
子(およびその代襲相続人)は第1順位の相続人となります。子が相続人となる場合、直系尊属(第2順位)は遺留分権利者になりません。
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4 遺留分侵害額請求において弁護士を利用するメリットとは?
情報収集と財産目録の請求:
弁護士は、弁護士法23条の2に基づく照会や、遺言執行者に対する民法1011条1項に基づく財産目録の作成・交付請求を行うことで、遺留分侵害額の算定に必要な情報を収集することが可能です。
法的助言と紛争回避:
遺留分侵害額請求には1年という短い消滅時効(相続開始および侵害を知った時から)があるため、弁護士は時効完成の防止や適切な行使のタイミングについて助言を行います。
複雑な評価・交渉・法的手段への対応:
不動産の評価額等で争いが生じた場合や、愛人側が任意に支払わない場合の調停・訴訟への移行(調停を経ずにいきなり訴訟提起するケースもあります)など、専門的な知見による解決を図ることができます。
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当事務所では相続問題について経験を積んだ弁護士が最初から最後まで、一貫して対応いたします。相談者の方に寄り添い、これまで培った経験から最善の解決方法を考え、皆様と共に解決に向けて進んでまいります。家族のために財産をどう分けてよいか悩んでみえる方、また、相続人としてトラブルを抱えて悩んでみえる方、是非当事務所にご相談ください。
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