解決事例(遺産分割)

1 被相続人に妻や子供、両親もおらず、遺言もないため、被相続人の兄弟間で預金を分配することになった事例

 

相談者:Aさん(50代・男性)

被相続人との関係:兄弟

争点:遺産である預金の解約及び分配

 

●背景

Xさんが亡くなりましたが、Xさんには妻も子供もおらず、両親もすでに他界していましたが、預金が約2000万円あることが判明しました。

そこで、Xさんの兄であるAさんが預金をどのように分けたらよいか相談にみえました。

 

●弁護士の関わり

本件では遺言がありませんでしたので、預金は法定相続分に応じて当然に分割されそれぞれの相続人に帰属することとなります。本件では相続人はAさんを含め10名いましたので、他の相続人の方に連絡をとり、法定相続分に応じて預金を分配することを提案させていただきました。

 

●解決内容

幸いにも他の相続人の方の同意を得ることができましたので、Aさんを相続人代表として預金の解約手続を行い、法定相続分に応じて各相続人の方に預金を分配し、解決となりました。

 

●所感

本件はXさんが亡くなった後にたまたま預金があることが発覚したため分割する必要が生じたものでした。被相続人の預金の解約については相続人全員の同意を求める金融機関が多く、当事者では手続がスムーズにいかない場合があります。弁護士が手続の代理することで手続がスムーズに行くこともありますので、手続に悩んだ場合には弁護士にご相談ください。

 

2 被相続人の遺産分割がなされていない間に、相続人の一人である被相続人の妻も亡くなり、数次相続が発生した事例

 

相談者:Aさん(60代・女性)

被相続人との関係:子

争点:数次相続の場合の遺産分割の方法

 

●背景

Xさんは遺言を残さずに亡くなりましたが、その遺産分割がなされる前にXさんの妻であるYさんも遺言を残さずに亡くなってしまいました。XさんとYさんには3人の子供がおり、当事者で遺産分割協議をしていましたが、話がまとまらず、3人の子供のうちの一人であるAさんが相談にみえました。

 

●弁護士のかかわり

本件では当事者同士で協議がまとまらなかったことから、Aさんから依頼を受けすぐに遺産分割調停の申立てをしました。遺産分割調停では、被相続人YさんがAさんや孫に多額の生前贈与をしていたことが問題になりましたが、最終的にはこちらの主張どおり、正当な贈与であるとの前提で協議を進めました。

 

●解決内容

本件では不動産、預金、株式といった財産がありましたが、代償分割等も活用しながら、全体として相続人間の公平さが保てるような分割協議が成立しました。

 

●所感

数次相続の場合、各被相続人の遺産ごとに法定相続分に従い、分割案を決めていくことが一般的です。しかし、本件のように被相続人Xさんと被相続人Yさんの遺産を全体としてまとめて、各相続人が公平に遺産を取得できるよう分割することもできます。本件では被相続人Xさんや被相続人Yさんの遺産ごとについてみれば、各相続人の法定相続分に足りなかったり、超過していたりしましたが、全体としてみれば公平に分割することができました。柔軟な遺産分割がなされた一例と言えます。

 

3 遺産について代償分割をした事例

 

相談者:Aさん(50代・男性)

被相続人との関係:子

争点:代償分割

 

●背景

Xさんが亡くなりましたが、遺言はありませんでした。相続人はXさんの子供3名であり、遺産である土地及び建物をXさんと共有していたAさんが、Xさんの土地及び建物の持ち分を取得したいとのことで相談にみえました。

 

●弁護士のかかわり

本件では相続人間の感情のもつれから当事者間での遺産分割協議ができない状態でした。そこで遺産分割調停の申立てを行いました。Xさんの遺産である土地及び建物はAさんとの共有でしたので、Aさんが土地及び建物の持ち分を取得することが合理的であること、そして、代償金を支払う資力も十分にあることを主張しました。

 

●解決内容

Aさんが遺産を全て取得するかわりに、代償金を他の2名の相続人へ支払うという内容の調停が成立しました。

 

●所感

本件は遺産に占める不動産の割合が多い事例でした。不動産については現物分割、換価分割、共有分割、代償分割などありますが、Aさんがもともと遺産である不動産について持ち分を持っていたことから代償分割を選択しました。代償分割については不動産の価格をどのように評価するかによって代償金の金額も異なってきます。不動産が多く、預貯金等の分けやすい財産が少なくて分割が進まないこともあります。そのような場合にも是非弁護士にご相談ください。

 

4 長期にわたり遺産分割がなされなかったため、相続人が30名以上になってしまった事例

 

相談者:Aさん(50代・女性)

被相続人との関係:ひ孫

争点:相続と時効取得

 

●背景

Xさんが亡くなり50年以上が経過していましたが、遺産分割はなされていませんでした。Xさんのひ孫にあたるAさんはXさん名義の土地上に建物を建てて居住していましたが、いつまでもこのままでは良くないのでXさん名義の土地を自己名義にしたいとのことで相談に見えました。

 

●弁護士のかかわり

遺産分割が未了の場合、通常ですと遺産分割協議や遺産分割調停を行うことになります。しかし本件では相続人が30名以上になってしまっており、遺産分割協議や遺産分割調停を行うことは時間や労力を考えると現実的ではありませんでした。そこで自己所有物でも取得時効の主張ができることを活用し、取得時効を理由とする所有権移転登記手続請求訴訟を提起することにしました。

 

●解決内容

ほとんどの相続人は裁判期日に欠席し、期日に出席された方にも丁寧に説明をすることで納得していただき、当方の主張どおりの判決となり、無事移転登記できました。

 

●所感

本件ではまず相続人の調査に膨大な時間がかかりました。また、訴訟提起前に裁判所と綿密に打合せをするとともに、全ての相続人の方へ事情を丁寧に説明する文書を送付いたしました。その結果、裁判期日前にはほとんどの相続人の方にこちらの主張を認めていただくことができ、スムーズに解決にいたりました。遺産分割は放置すれば放置するほど解決するまで時間や労力がかかるようになりますので、早めに弁護士にご相談ください。

 

5 遺産分割調停において取得する代償金が50万円から250万円に増額ができた事例

相談者:Cさん(50代・女性)

被相続人との関係:子

争点:代償金の金額

 

●背景

Xさんが亡くなりましたが遺言がないため相続人間で遺産分割協議をしていましたが、まとまらず相続人である兄のAさんが遺産分割調停を申し立てたため、Cさんが相談に見えました。

 

●弁護士のかかわり

本件では調停の手続代理人として関与することになりましたが、兄のAさんがが遺産分割調停を申し立てる前に弟のBさんが遺産分割調停の申立てをして取り下げていたという、当事者間の感情の対立が大きい事案でした。

 

●解決内容

兄のAさんは当初はCさんに対してAさんが不動産等を取得する代償として50万円を支払うとの提案をしていましたが、最終的には代償金として250万円の支払いを受けることで調停が成立しました。

 

●所感

本件では遺産である土地や建物の評価をいくらにするか、また、葬儀費用、法要の費用や香典をどうやって扱うかといった問題のほかに、当事者間の感情の対立をどう解消していくかが問題になりました。代理人が入ることで依頼人の感情に配慮しながら法的な観点から冷静に粘り強く話しを進めていくことで調停成立までたどり着くことができ、代償金の増額もすることができました。

 

 

6 遺産分割協議において取得額が300万円増額できた事例

相談者:Aさん(50代・男性)

被相続人との関係:子

争点:被相続人の前妻との間の子との遺産分割協議

 

●背景

Xさんが亡くなりましたが遺言がないため相続人間で遺産分割協議をしようとしたところ、Xさんには前妻との間に子(Bさんといいます)がおり、これまで交流も全くなく、どこにいるかもわからず協議が進められないとのことで相談に見えました。

 

●弁護士のかかわり

本件ではまずXさんの前妻との間の子のBさんの所在調査をすることから始めました。そしてBさんの所在が判明した段階で遺産分割協議の申し入れを行いました。

 

●解決内容

Bさんと面談をして当方の遺産分割協議案を伝えました。また、AさんとしてはBさんの存在を知ってからは血のつながった兄弟として一度会って話をしたいとの希望を持っていること、今後も親族として交流をしていきたい気持ちを持っていること等を伝えました。その結果当方で提案した内容どおりの遺産分割協議をすることができ、Aさんの側で法定相続分で分割した場合よりも300万円多く遺産を取得することができました。

●所感

本件は、相続をきっかけにAさんとBさんの交流が始まるなど相続人同士の良好な関係を築くことができた珍しいケースでした。

いざ相続が開始してみたら他にも相続人がいることが判明したということはよくあります。その場合に判明した相続人の所在を調査することは当事者では限界がありますし、実際に所在が判明したとしてもどのように話をしてよいか不安な場合もあります。そのような時、弁護士であれば所在の調査から相手との話し合いまで責任をもって進めさせていただきます。

 

7 相手相続人である兄と連絡がつかないため、調停に代わる審判を利用して解決した事例

 

相談者:Sさん

被相続人:父

被相続人との関係:子

争点:連絡がとれない相続人がいる場合にどのように遺産分割の手続を進めるか。

 

背景

お父さんが亡くなり遺産としてマンションがありました。相続人はSさんと兄の二人でしたが、兄とは全く連絡がとれない状況で、マンションの遺産分割が進まず、相談にみえました。

 

・弁護士のかかわり

連絡がとれないとのことで、まずは所在を調査することから始め、その上で遺産分割の手続を進めることとしました。

 

・解決内容

弁護士が代理人として受任し、まずは戸籍の附票や住民票等から所在を調査しました。その上で、文書にて兄に対して連絡をしましたがやはり連絡はもらえませんでした。

そこで遺産分割調停の申立てをしましたが、調停にも出席しないことを見越して、申立て当初から調停に代わる審判を求めました。

調停に代わる審判を見越して、当初から適正な金額での代償分割(Sさんが適正な代償金を支払う)内容の分割方法の希望を出し、そのためのマンションの評価資料も提出しておきました。

その結果、兄は調停には出席しませんでしたが、2回目の期日にて審判となり、無事に代償分割が認められました。

 

・所感

相続人と連絡が取れない、あるいは返事をくれない、といった理由で遺産分割協議が進まないことがあります。その場合には、早期に遺産分割調停の申立てを行い、初めから調停に代わる審判を求めることで、迅速な解決が可能となる場合があります。相続人と連絡がとれなかったり、相続人が多数いる場合には、分割内容によっては調停に代わる審判によって迅速な解決が可能となります。

 

8 遺産は不動産のみとの説明をされていたが、実は預金が出金されてしまっており、使途不明金として追及したところ、遺産分割において現金400万円を取得できた事例

 

相談者:Hさん

被相続人:父

被相続人との関係:子

争点:被相続人の生前及び死後の1500万円の出金が使途不明金にあたるかどうか。

 

・背景

父が亡くなり遺産分割の協議を行うこととなりましたが、遺産は不動産のみとの説明が田の相続人からなされました。しかし、財産を管理していた兄に説明を求めても何ら回答がなく、様々な嫌がらせも受け、精神的につらいとのことで相談に見えました。

 

・弁護士のかかわり

まずは預貯金を調査することから始めました。すると1500万円が出金されていることがわかりました。

使途不明金については相手が認めないことが多く、また、預金の履歴の調査など煩雑な作業も必要となります。預貯金の調査に引き続き、弁護士が代理人として使途不明金返還請求にかかわることになりました。

 

・解決内容

弁護士から相手に使途について説明を求める通知をしても全く回答がないため訴訟提起となりました。

訴訟のなかで、1500万円のうち、被相続人のために使ったお金以外の900万円が現金で残っていることが明らかになりました。そこでその現金を遺産として、訴訟外で遺産分割協議を成立させ、Hさんは現金400万円を取得できることとなり、その後、訴訟は取り下げるという解決を行いました。

 

・所感

財産管理をしていた相続人から、預貯金はないと説明をされたとしても、実は出金されてしまっていて相続開始時には残っていないだけということもあります。

使途不明金については預金の履歴だけでなく払戻票や介護記録・医療記録なども必要になります。事案の性質上訴訟になることが多く、また、訴訟においても、いつ誰が出金したのか、同意や引出権限はあったのか、何に使ったのかなどと細かな議論を、積み重ねる必要があります。一般訴訟事件とは異なる面があり、経験が大事になってくる事案と言えます。

 

 

8 母の死を新聞で知った相続人が遺留分など3000万円を取得できた事例

 

相談者:Kさん

被相続人:母

被相続人との関係:子

争点:遺産など一切わからない状況での遺留分の請求や交通事故損害賠償請求(他の共同相続人はほとんど交流のない姉が1名で、姉が母と同居)

 

・背景

実母が交通事故で無くなったことを新聞で知ったKさんが、ほとんど交流のない姉と相続手続をどう進めてよいかわからず困ってしまったので相談にきました。

 

・弁護士のかかわり

本件はKさんの側に遺産の資料が全くなく、母の死も知らせてもらえないという状況でしたので、弁護士が代理人として他の共同相続人である姉と交渉及び相続手続を進めることとなりました。

 

・解決内容

まず、遺産については遺産に関する資料や遺言書がある場合は遺言書の開示を求めました。その結果、公正証書遺言があり、一切の財産を姉に相続させるとなっており、遺留分の請求をすることとなりました。本件では遺言執行者に司法書士が指定されていたので、司法書士に対して財産目録や遺産の資料の開示、報告を求め、その結果、遺留分として約2000万円程度請求できることがわかり、ほぼこちらの考える金額を支払ってもらえました。

また、交通事故により亡くなっており、その損害賠償請求手続も行いました。本件では母の過失が大きく、まずは自賠責の被害者請求を先行させました(任意保険会社との交渉では過失相殺を主張され、賠償額が大きく減額される可能性があり、自賠責へ被害者請求をしたほうが多くの賠償金が認められる可能性が高い事案でした。)。遺言書で一切を相続させるとなっている場合に、交通事故の損害賠償金を誰が取得できるか問題がありましたが、Kさんが半分を取得する内容で合意ができ、遺留分以外に、約1000万円を取得できました。

 

・所感

他の共同相続人と交流がなく、また、遺産の資料も他の共同相続人がもっている場合、どのように交渉や協議を進めていってよいかわからないことがあります。遺産の資料としてどういったものが必要であり、どのように集めるかは知らない方も多いかと思います。また、交流のない相続人と話をすることが精神的負担である場合もあります。そういった場合には弁護士に交渉や手続等を依頼するメリットがあります。

 

9 連絡のとれない相続人と遺産分割協議ができた事例

 

相談者:Tさん

被相続人:兄(兄弟姉妹間の相続)

争点:連絡がとれない相続人がいる場合の遺産分割

 

・背景

Tさんの兄が亡くなり、兄には子がいなかったので、Tさんを始めとする兄弟姉妹が相続人となりました。兄弟姉妹の中には既に亡くなっている人もおり、代襲相続人も関わる案件(相続人は全員で5名)でした。そのうち代襲相続人の一人と連絡がつかないとのことで、調停にしたいと相談に見えました。

 

・弁護士のかかわり

Tさんは当初司法書士に依頼をして手続を進めていましたが、司法書士は遺産分割調停の代理人はできないため、遺産分割調停において代理人を立てるのであれば弁護士しかできません。そこで調停も視野にいれて当職が代理人として受任致しました。

 

・解決内容

もともと他の相続人とはおおよそ話合いができており、そこから調停をするのは時間もかかり迂遠であると感じました。そこで、なんとか調停外で分割協議ができないかと考え、連絡が取れない代襲相続人及びその代襲相続人の弟(この方も代襲相続人です)に当職から手紙を送付いたしました。その結果、連絡のとれない代襲相続人の弟から連絡があり、その弟が窓口となってくれ、調停にせずに分割協議をまとめることができました。

 

・弁護士の所感

連絡のとれない相続人がいたり、相続人が多数いたりする場合、遺産分割調停を利用することがあります。しかし調停には時間も労力もかかることから、その旨を丁寧に説明した文書を送付したことにより、何とか調停外で協議をまとめることができ、早期解決ができました。調停にした方が早期解決になる場合もありますが、どの時点で調停にするかどうかは難しい判断が必要であると感じました。

 

 

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