相続財産に関するQ&A

Q:相続財産に現金がありますが、法定相続分に応じて交付するよう、現金を管理している他の相続人に請求できますか。

A:できません。

現金については、相続分に応じて分割されるものではなく、遺産分割手続が必要であるというのが裁判所の考え方です(最高裁平成4年4月10日)。

 

Q:預貯金についてはどのように分けるのでしょうか。

A:遺産分割手続によって分けます。

預貯金については従来は可分債権として相続開始と同時に当然に相続分に応じて各相続人が取得するとされていました。

しかし、平成28年12月19日の最高裁決定により、「普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権」は可分債権ではなく、当然に相続分に応じて分割されず、遺産分割の対象となるとされました。

そのため、遺産分割手続によって分けることになります。

 

Q:被相続人が相続人名義でしていた預金(名義預金、借名口座)は遺産となるのでしょうか。

A:ケースバイケースとなります。

被相続人以外の者の名義である財産が、相続開始時において被相続人に帰属するものであったか否かは、「当該財産又はその購入原資の出捐者、当該財産の管理及び運用の状況、当該財産から生ずる利益の帰属者、被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用をする者との関係、当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯等を総合考慮して」判断されます。

たとえば、通帳や印鑑を被相続人が管理していたといった場合は被相続人の財産として遺産になると言えます。

一方で、相続人が贈与を受けたのであるから遺産には当たらないとの主張がされることもあります。贈与を受けたといえるかどうかについては、贈与契約書の有無、贈与税の申告の有無、入出金状況等を考慮して判断されます。相続人がみずからキャッシュカードを保有し、自らATM等でおろしていたような場合は、その都度の贈与が認められる可能性があります。贈与が認められる場合には金額によっては特別受益に該当する場合があります。

 

Q:遺産分割の前に遺産である預貯金を払い戻すことはできますか。

A:できます(改正法 2019年7月1日施行)。

1.家庭裁判所の判断が不要な場合

相続開始時における預貯金の額(口座基準)×1/3×法定相続分については単独で払い戻しすることができます(民法909条の2)。

ただし、各金融機関について150万円までという上限があります。

 

2.家庭裁判所の判断を経る場合(預金債権の仮分割)

家事事件手続法が改正され、仮払いの必要性があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、仮払いが認められることとなりました(家事事件手続法200条3項)。

①遺産に属する預貯金債権であること

遺贈や贈与されている預貯金債権は遺産ではないで仮分割はできません。

②本案が係属していること

遺産分割の調停や審判が家庭裁判所に係属していることが必要です。

③申立権者は遺産分割調停・審判の申立人または相手方

④他の共同相続人の利益を害しないこと

例えば、

・遺産の総額に申立人の法定相続分を乗じた範囲内

・預貯金債権の額に申立人の法定相続分を乗じた範囲内

といった場合を想定しています。

 

 

Q:相続人の一人が被相続人の預金の一部をおろして保管しています。この場合、遺産としては預金として扱うのでしょうか。

A:この場合は現金として扱います。

また、相続人が自己名義の口座にて保管している場合も現金(預り金)として扱います

 

Q:亡くなった父が生命保険をかけており、受取人が兄になっていました。兄が受け取る保険金は相続財産になりますか。

A:相続財産にはなりません。

受取人は被相続人の権利を承継するのではなく、保険契約から生じる生命保険金請求権という固有の権利を取得するからです。もっとも相続人間であまりにも不公平になるような場合は特別受益に準じて持ち戻しの対象となります

 

Q:遺産の中に賃貸アパートがあり、毎月賃料収入が発生しています。賃料収入については誰が取得できるのでしょうか。

A:遺言の有無によって決まります。

賃料債権については「遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する」とするのが判例(最高裁平成17年9月8日判決)です。そのため、法定相続分に応じて各相続人が賃料を取得することになります。

もっとも上記判例は法定相続の場合ですので、遺言がある場合には妥当せず、遺言によって遺産である不動産を取得した相続人が賃料も取得することになると考えます。

 

Q:遺産の中に株式があります。株式を分けるためには遺産分割協議が必要でしょうか。また、どのように権利行使したらよいでしょうか。

A:株式については遺産分割協議が必要です。

株式数が複数あっても、法定相続分に応じて当然に分割されることにはならず、法定相続分に応じて共同相続人での準共有になります。そのため、株式を分けるためには遺産分割協議が必要です。

遺産分割が終了し、名義変更の手続きをとれば株主として権利行使が可能となります。

一方で、遺産分割が未了の場合、先ほど述べたように準共有状態ですので、株主として権利行使する1名を決めて会社に通知する必要があります。権利行使する1名を定める方法ですが、準共有物の管理行為であるとして法定相続分による多数決でよいとするのが判例です。そのため、相続人の法定相続分による多数決により権利行使者を指定し、会社に通知して権利行使することになります。

 

Q:ゴルフ会員権は相続の対象になりますか。また、どのように権利行使したらよいでしょうか。

A:ゴルフクラブの会則の定めによって異なります。

会則により相続人による承継を認めている場合には相続の対象となりますが、会則によって承継を否定している場合には相続の対象にはなりません。

相続の対象となる場合には、遺産分割協議により取得する相続人を1名決定し、名義変更の手続きを請求することとなります。相続の対象とならない場合には、預託金返還請求権や滞納した年会費の支払義務などの個々の債権、債務を相続することになります。

 

Q:父の死後、相続人の一人である兄が勝手に遺産である家に居住しています。明け渡しを求めることはできるでしょうか。

A:原則としてできません。もっとも賃料相当分を請求することはできます。

兄も相続人であり共有持ち分を有しています。そのため、共有持ち分に基づいて共有物(家)全部を占有する権原を有しています(民法249条)。

もっとも、「明渡を求める理由を主張立証」すれば共有物の明け渡しを求めることができるとするのが判例です(最高裁昭和41年5月19日)。

そのため、共有物の占有の変更を管理行為ととらえれば共同相続人の多数決で決まったことを主張立証すれば明渡しを求めることができます。

一方で、共有物の占有の変更を変更行為ととらえれば、共同相続人全員の同意が必要となり、兄の同意がない以上明け渡しを求めることはできません(このような立場に立つものとして、東京地裁昭和63年4月15日判決)。

明け渡しを求めることがでいないとしても、兄に対して、持ち分割合に応じて賃料相当額の不当利得ないし損害賠償を請求することができます。

 

Q:家系図、お墓、位牌、仏壇などの財産は誰が承継するのでしょうか。

A:家系図、墓石や墓碑、位牌、仏壇などの祭祀財産は、遺産ではなく、祭祀主宰者が承継するとされています。

祭祀主宰者は、被相続人の指定により、指定がない場合には慣習によって決まります。被相続人による指定や慣習について争いがある場合には家庭裁判所の審判によって決定します。被相続人による指定については、口頭でも書面でもよく、明示か黙示か問いません。遺言によっても指定することも可能です。

 

Q:遺骨は誰のものでしょうか

A:祭祀主宰者のものとなります。

遺骨については慣習上の祭祀主宰者に帰属するとされています(最高裁平成元年7月18日判決)。そのため遺産分割の対象にはなりません。

 

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