【Q&A】遺産分割に応じない相続人がいます。原因と解決に向けた具体的対処法を教えてください。

 

相続は、時に複雑な人間関係や感情が絡み合い、スムーズに進まないことがあります。中でも、相続人の中に遺産分割協議に応じない人がいる場合、他の相続人は大きな不安やストレスを抱えることになるでしょう。

本記事では、遺産分割に応じない相続人がいる場合に考えられる原因と、具体的な対処法について、専門家の視点から詳しく解説します。

 

なぜ?遺産分割に応じない相続人の心理と原因

遺産分割協議がスムーズに進まない背景には、様々な要因が考えられます。相続人それぞれの立場や感情、遺産に対する考え方の違いなどが複雑に絡み合っていることが多いのです。

 

  1. 1 遺産に対する強い思い入れや不満

・特定の遺産(実家、先祖代々の品など)に対する個人的な思い入れが強く、手放したくない。

・生前の被相続人との関係性から、他の相続人よりも多くの遺産を相続すべきだと考えている。

・過去の出来事や感情的な対立から、特定の相続人に不満や不信感を持っている。

  1. 2 法的な知識の不足や誤解

・遺産分割のルールや自身の権利について正確に理解していない。

・感情的な理由から、法的な根拠のない主張をしている。

・遺産分割の方法について、実現不可能な要求をしている。

  1. 3 将来への不安や生活状況の変化への不安

・自身の経済状況が不安定で、少しでも多くの遺産を確保したいと考えている。

・高齢や病気などにより、今後の生活に不安を感じている。

・他の相続人の生活状況と比較して、不公平感を感じている。

  1. 4 弁護士など専門家からの不適切なアドバイス

・一部の相続人が、専門家から誤った情報や感情的なアドバイスを受けている可能性があります(中には弁護士からアドバイスをもらっていると言っていても、内容的に本当か信じられないような場合もあります。)。

・専門家の方針が、かえって遺産分割協議を複雑化させている場合もあります。

  1. 5 その他

・認知症などにより、判断能力が低下している。

・連絡が取れない、所在が不明である。

・単に手続きが面倒で、先延ばしにしている。

 

どうすればいい?遺産分割に応じない相続人への対処法

遺産分割協議に応じない相続人がいる場合、時間ばかりが過ぎてしまい、他の相続人の生活にも影響が出かねません。以下に、状況に応じた具体的な対処法を段階的に解説します。

 

Step 1:まずは話し合いを試みる(感情に配慮した丁寧な対話)

頭ごなしに相手を責めるのではなく、まずは冷静に話し合いを持つことが重要です。相手の言い分を丁寧に聞き、その背景にある理由や感情を理解するよう努めましょう。

 

直接会って話す: 可能であれば、顔を合わせてじっくりと話し合う機会を持ちましょう。電話やメールでは伝わりにくいニュアンスや感情も共有できます。

第三者の同席を検討する: 親族や信頼できる第三者に同席してもらい、客観的な視点から話し合いを進めるのも有効です。

 

Step 2:弁護士に相談し、法的アドバイスを受ける

話し合いがうまくいかない場合や自分でやり取りをすることが負担になる場合、速やかに弁護士に相談しましょう。弁護士は、法的な観点から状況を整理し、適切なアドバイスや解決策を提案し、代理人として全てに対応してくれます。

早期相談のメリット: 早めに相談することで、事態が複雑化するのを防ぎ、早期解決につながる可能性があります。精神的な負担等からも解放されます。

弁護士選びのポイント: 相続問題に詳しい弁護士を選びましょう。実績や得意分野、相性などを考慮することが大切です。

 

Step 3:遺産分割調停を申し立てる(家庭裁判所の関与)

弁護士に依頼しても遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることを検討します。

遺産分割調停とは: 家庭裁判所の調停委員が当事者の間に入り、相続人双方の意見を聞きながら、合意による解決を目指す手続きです。

調停のメリット: 調停委員が間に入ることで、当事者同士の感情的な対立を和らげ、冷静な話し合いを進めることができます。

調停の流れ: 申立て、調停期日の設定、調停期日の開催、調停委員による意見聴取、合意成立または不成立となります。

 

Step 4:遺産分割審判を申し立てる(裁判所の判断)

遺産分割調停が不成立に終わった場合、最終的な手段として遺産分割審判を申し立てることになります。

遺産分割審判とは: 家庭裁判所が、相続人それぞれの主張や提出された資料に基づいて、遺産の分け方を決定する手続きです。

審判の注意点: 裁判所の判断に不満があっても、原則として従う必要があります。

審判の流れ: 申立て、審理、審判書の作成、確定となります。

 

 

遺産分割をスムーズに進めるためのポイント

遺産分割は、相続人全員が協力して行うことが理想です。将来的なトラブルを避けるためにも、以下の点に注意しましょう。

生前の準備: 被相続人が遺言書を作成しておくことで、遺産分割の紛争を大幅に減らすことができます。

情報共有の徹底: 相続財産に関する情報を、相続人全員が正確に共有することが大切です。

感情的な対立を避ける: 遺産分割協議は、冷静かつ客観的に進めるように心がけましょう。

専門家の活用: 必要に応じて、早めに弁護士や税理士などの専門家に相談しましょう。

 

まとめ

遺産分割に応じない相続人がいる場合、他の相続人は大きな負担を強いられますが、決して解決できない問題ではありません。まずは冷静に話し合いを試み、それでも解決しない場合は、弁護士に相談し、法的な手続きを検討しましょう。

本記事が、遺産分割問題に直面している皆様の一助となれば幸いです。

 

【監修】

[弁護士事務所名] 鴻陽法律事務所

[弁護士氏名] 鈴木和貴

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスを提供するものではありません。具体的な遺産分割問題については、必ず専門の弁護士にご相談ください。

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