【解決事例】認知症の父が遺留分減殺請求権を行使しないまま死亡し、相続人が遺留分減殺請求権を行使して認められた事例
相談者:Oさん
被相続人:祖父
被相続人との関係:孫
争点:祖父の相続において父が認知症で遺留分減殺請求権を行使できないまま死亡した場合の、父の相続人による権利行使の可否(遺留分侵害を知ってから1年の時効が完成したと言えるか)
背景
被相続人はOさんの祖父ですが、Oさんの父は認知症のため遺留分減殺請求権を行使しないまま亡くなりました。父を相続したOさんが遺留分減殺請求権を行使しようとしましたが、遺留分侵害を知ってから1年という時効により遺留分減殺請求権は行使できないのでは、とのことで相談にきました。
弁護士のかかわり
Oさんの父は認知症のためとても権利行使できる状態ではありませんでした。そのため遺留分侵害を知ってから1年の時効は完成していないと判断し、依頼を受けることとなりました。
解決内容
相手の相続人に対して、成年被後見人に関する時効停止の定め(民法158条)の趣旨からして、本件においても時効は完成していないとして、遺留分減殺請求権を行使する旨の通知をいたしました。これに対して相手代理人からは時効完成により、請求には応じないとの回答がきました。そこで遺留分減殺請求の調停の申立てを行いました。
調停においてもOさんの父は祖父の相続開始時、認知症で判断能力がなく、民法158条の法意からは時効は完成しておらず、相続人において権利行使可能との主張をし、最終的にはこちらの言い分に近い内容での調停が成立しました。
所感
本件は遺留分権利者が権利行使しないまま死亡し、かつ、当時認知症で権利行使できる状況ではなかったという事案でした。この場合、成年後見と時効に関する民法158条を知っているかどうかで権利行使できるかどうかで、判断を間違えてしまう可能性がありました。法的に正確な知識が必要となる案件でした。