解決事例(遺産分割)
1 被相続人に妻や子供、両親もおらず、遺言もないため、被相続人の兄弟間で預金を分配することになった事例
相談者:Aさん(50代・男性)
被相続人との関係:兄弟
争点:遺産である預金の解約及び分配
●背景
Xさんが亡くなりましたが、Xさんには妻も子供もおらず、両親もすでに他界していましたが、預金が約2000万円あることが判明しました。
そこで、Xさんの兄であるAさんが預金をどのように分けたらよいか相談にみえました。
●弁護士の関わり
本件では遺言がありませんでしたので、預金は法定相続分に応じて当然に分割されそれぞれの相続人に帰属することとなります。本件では相続人はAさんを含め10名いましたので、他の相続人の方に連絡をとり、法定相続分に応じて預金を分配することを提案させていただきました。
●解決内容
幸いにも他の相続人の方の同意を得ることができましたので、Aさんを相続人代表として預金の解約手続を行い、法定相続分に応じて各相続人の方に預金を分配し、解決となりました。
●所感
本件はXさんが亡くなった後にたまたま預金があることが発覚したため分割する必要が生じたものでした。被相続人の預金の解約については相続人全員の同意を求める金融機関が多く、当事者では手続がスムーズにいかない場合があります。弁護士が手続の代理することで手続がスムーズに行くこともありますので、手続に悩んだ場合には弁護士にご相談ください。
2 被相続人の遺産分割がなされていない間に、相続人の一人である被相続人の妻も亡くなり、数次相続が発生した事例
相談者:Aさん(60代・女性)
被相続人との関係:子
争点:数次相続の場合の遺産分割の方法
●背景
Xさんは遺言を残さずに亡くなりましたが、その遺産分割がなされる前にXさんの妻であるYさんも遺言を残さずに亡くなってしまいました。XさんとYさんには3人の子供がおり、当事者で遺産分割協議をしていましたが、話がまとまらず、3人の子供のうちの一人であるAさんが相談にみえました。
●弁護士のかかわり
本件では当事者同士で協議がまとまらなかったことから、Aさんから依頼を受けすぐに遺産分割調停の申立てをしました。遺産分割調停では、被相続人YさんがAさんや孫に多額の生前贈与をしていたことが問題になりましたが、最終的にはこちらの主張どおり、正当な贈与であるとの前提で協議を進めました。
●解決内容
本件では不動産、預金、株式といった財産がありましたが、代償分割等も活用しながら、全体として相続人間の公平さが保てるような分割協議が成立しました。
●所感
数次相続の場合、各被相続人の遺産ごとに法定相続分に従い、分割案を決めていくことが一般的です。しかし、本件のように被相続人Xさんと被相続人Yさんの遺産を全体としてまとめて、各相続人が公平に遺産を取得できるよう分割することもできます。本件では被相続人Xさんや被相続人Yさんの遺産ごとについてみれば、各相続人の法定相続分に足りなかったり、超過していたりしましたが、全体としてみれば公平に分割することができました。柔軟な遺産分割がなされた一例と言えます。
3 遺産について代償分割をした事例
相談者:Aさん(50代・男性)
被相続人との関係:子
争点:代償分割
●背景
Xさんが亡くなりましたが、遺言はありませんでした。相続人はXさんの子供3名であり、遺産である土地及び建物をXさんと共有していたAさんが、Xさんの土地及び建物の持ち分を取得したいとのことで相談にみえました。
●弁護士のかかわり
本件では相続人間の感情のもつれから当事者間での遺産分割協議ができない状態でした。そこで遺産分割調停の申立てを行いました。Xさんの遺産である土地及び建物はAさんとの共有でしたので、Aさんが土地及び建物の持ち分を取得することが合理的であること、そして、代償金を支払う資力も十分にあることを主張しました。
●解決内容
Aさんが遺産を全て取得するかわりに、代償金を他の2名の相続人へ支払うという内容の調停が成立しました。
●所感
本件は遺産に占める不動産の割合が多い事例でした。不動産については現物分割、換価分割、共有分割、代償分割などありますが、Aさんがもともと遺産である不動産について持ち分を持っていたことから代償分割を選択しました。代償分割については不動産の価格をどのように評価するかによって代償金の金額も異なってきます。不動産が多く、預貯金等の分けやすい財産が少なくて分割が進まないこともあります。そのような場合にも是非弁護士にご相談ください。
4 長期にわたり遺産分割がなされなかったため、相続人が30名以上になってしまった事例
相談者:Aさん(50代・女性)
被相続人との関係:ひ孫
争点:相続と時効取得
●背景
Xさんが亡くなり50年以上が経過していましたが、遺産分割はなされていませんでした。Xさんのひ孫にあたるAさんはXさん名義の土地上に建物を建てて居住していましたが、いつまでもこのままでは良くないのでXさん名義の土地を自己名義にしたいとのことで相談に見えました。
●弁護士のかかわり
遺産分割が未了の場合、通常ですと遺産分割協議や遺産分割調停を行うことになります。しかし本件では相続人が30名以上になってしまっており、遺産分割協議や遺産分割調停を行うことは時間や労力を考えると現実的ではありませんでした。そこで自己所有物でも取得時効の主張ができることを活用し、取得時効を理由とする所有権移転登記手続請求訴訟を提起することにしました。
●解決内容
ほとんどの相続人は裁判期日に欠席し、期日に出席された方にも丁寧に説明をすることで納得していただき、当方の主張どおりの判決となり、無事移転登記できました。
●所感
本件ではまず相続人の調査に膨大な時間がかかりました。また、訴訟提起前に裁判所と綿密に打合せをするとともに、全ての相続人の方へ事情を丁寧に説明する文書を送付いたしました。その結果、裁判期日前にはほとんどの相続人の方にこちらの主張を認めていただくことができ、スムーズに解決にいたりました。遺産分割は放置すれば放置するほど解決するまで時間や労力がかかるようになりますので、早めに弁護士にご相談ください。
5 遺産分割調停において取得する代償金が50万円から250万円に増額ができた事例
相談者:Cさん(50代・女性)
被相続人との関係:子
争点:代償金の金額
●背景
Xさんが亡くなりましたが遺言がないため相続人間で遺産分割協議をしていましたが、まとまらず相続人である兄のAさんが遺産分割調停を申し立てたため、Cさんが相談に見えました。
●弁護士のかかわり
本件では調停の手続代理人として関与することになりましたが、兄のAさんがが遺産分割調停を申し立てる前に弟のBさんが遺産分割調停の申立てをして取り下げていたという、当事者間の感情の対立が大きい事案でした。
●解決内容
兄のAさんは当初はCさんに対してAさんが不動産等を取得する代償として50万円を支払うとの提案をしていましたが、最終的には代償金として250万円の支払いを受けることで調停が成立しました。
●所感
本件では遺産である土地や建物の評価をいくらにするか、また、葬儀費用、法要の費用や香典をどうやって扱うかといった問題のほかに、当事者間の感情の対立をどう解消していくかが問題になりました。代理人が入ることで依頼人の感情に配慮しながら法的な観点から冷静に粘り強く話しを進めていくことで調停成立までたどり着くことができ、代償金の増額もすることができました。
6 遺産分割協議において取得額が300万円増額できた事例
相談者:Aさん(50代・男性)
被相続人との関係:子
争点:被相続人の前妻との間の子との遺産分割協議
●背景
Xさんが亡くなりましたが遺言がないため相続人間で遺産分割協議をしようとしたところ、Xさんには前妻との間に子(Bさんといいます)がおり、これまで交流も全くなく、どこにいるかもわからず協議が進められないとのことで相談に見えました。
●弁護士のかかわり
本件ではまずXさんの前妻との間の子のBさんの所在調査をすることから始めました。そしてBさんの所在が判明した段階で遺産分割協議の申し入れを行いました。
●解決内容
Bさんと面談をして当方の遺産分割協議案を伝えました。また、AさんとしてはBさんの存在を知ってからは血のつながった兄弟として一度会って話をしたいとの希望を持っていること、今後も親族として交流をしていきたい気持ちを持っていること等を伝えました。その結果当方で提案した内容どおりの遺産分割協議をすることができ、Aさんの側で法定相続分で分割した場合よりも300万円多く遺産を取得することができました。
●所感
本件は、相続をきっかけにAさんとBさんの交流が始まるなど相続人同士の良好な関係を築くことができた珍しいケースでした。
いざ相続が開始してみたら他にも相続人がいることが判明したということはよくあります。その場合に判明した相続人の所在を調査することは当事者では限界がありますし、実際に所在が判明したとしてもどのように話をしてよいか不安な場合もあります。そのような時、弁護士であれば所在の調査から相手との話し合いまで責任をもって進めさせていただきます。
7 相手相続人である兄と連絡がつかないため、調停に代わる審判を利用して解決した事例
相談者:Sさん
被相続人:父
被相続人との関係:子
争点:連絡がとれない相続人がいる場合にどのように遺産分割の手続を進めるか。
・背景
お父さんが亡くなり遺産としてマンションがありました。相続人はSさんと兄の二人でしたが、兄とは全く連絡がとれない状況で、マンションの遺産分割が進まず、相談にみえました。
・弁護士のかかわり
連絡がとれないとのことで、まずは所在を調査することから始め、その上で遺産分割の手続を進めることとしました。
・解決内容
弁護士が代理人として受任し、まずは戸籍の附票や住民票等から所在を調査しました。その上で、文書にて兄に対して連絡をしましたがやはり連絡はもらえませんでした。
そこで遺産分割調停の申立てをしましたが、調停にも出席しないことを見越して、申立て当初から調停に代わる審判を求めました。
調停に代わる審判を見越して、当初から適正な金額での代償分割(Sさんが適正な代償金を支払う)内容の分割方法の希望を出し、そのためのマンションの評価資料も提出しておきました。
その結果、兄は調停には出席しませんでしたが、2回目の期日にて審判となり、無事に代償分割が認められました。
・所感
相続人と連絡が取れない、あるいは返事をくれない、といった理由で遺産分割協議が進まないことがあります。その場合には、早期に遺産分割調停の申立てを行い、初めから調停に代わる審判を求めることで、迅速な解決が可能となる場合があります。相続人と連絡がとれなかったり、相続人が多数いる場合には、分割内容によっては調停に代わる審判によって迅速な解決が可能となります。
8 遺産は不動産のみとの説明をされていたが、実は預金が出金されてしまっており、使途不明金として追及したところ、遺産分割において現金400万円を取得できた事例
相談者:Hさん
被相続人:父
被相続人との関係:子
争点:被相続人の生前及び死後の1500万円の出金が使途不明金にあたるかどうか。
・背景
父が亡くなり遺産分割の協議を行うこととなりましたが、遺産は不動産のみとの説明が田の相続人からなされました。しかし、財産を管理していた兄に説明を求めても何ら回答がなく、様々な嫌がらせも受け、精神的につらいとのことで相談に見えました。
・弁護士のかかわり
まずは預貯金を調査することから始めました。すると1500万円が出金されていることがわかりました。
使途不明金については相手が認めないことが多く、また、預金の履歴の調査など煩雑な作業も必要となります。預貯金の調査に引き続き、弁護士が代理人として使途不明金返還請求にかかわることになりました。
・解決内容
弁護士から相手に使途について説明を求める通知をしても全く回答がないため訴訟提起となりました。
訴訟のなかで、1500万円のうち、被相続人のために使ったお金以外の900万円が現金で残っていることが明らかになりました。そこでその現金を遺産として、訴訟外で遺産分割協議を成立させ、Hさんは現金400万円を取得できることとなり、その後、訴訟は取り下げるという解決を行いました。
・所感
財産管理をしていた相続人から、預貯金はないと説明をされたとしても、実は出金されてしまっていて相続開始時には残っていないだけということもあります。
使途不明金については預金の履歴だけでなく払戻票や介護記録・医療記録なども必要になります。事案の性質上訴訟になることが多く、また、訴訟においても、いつ誰が出金したのか、同意や引出権限はあったのか、何に使ったのかなどと細かな議論を、積み重ねる必要があります。一般訴訟事件とは異なる面があり、経験が大事になってくる事案と言えます。
9 母の死を新聞で知った相続人が遺留分など3000万円を取得できた事例
相談者:Kさん
被相続人:母
被相続人との関係:子
争点:遺産など一切わからない状況での遺留分の請求や交通事故損害賠償請求(他の共同相続人はほとんど交流のない姉が1名で、姉が母と同居)
・背景
実母が交通事故で無くなったことを新聞で知ったKさんが、ほとんど交流のない姉と相続手続をどう進めてよいかわからず困ってしまったので相談にきました。
・弁護士のかかわり
本件はKさんの側に遺産の資料が全くなく、母の死も知らせてもらえないという状況でしたので、弁護士が代理人として他の共同相続人である姉と交渉及び相続手続を進めることとなりました。
・解決内容
まず、遺産については遺産に関する資料や遺言書がある場合は遺言書の開示を求めました。その結果、公正証書遺言があり、一切の財産を姉に相続させるとなっており、遺留分の請求をすることとなりました。本件では遺言執行者に司法書士が指定されていたので、司法書士に対して財産目録や遺産の資料の開示、報告を求め、その結果、遺留分として約2000万円程度請求できることがわかり、ほぼこちらの考える金額を支払ってもらえました。
また、交通事故により亡くなっており、その損害賠償請求手続も行いました。本件では母の過失が大きく、まずは自賠責の被害者請求を先行させました(任意保険会社との交渉では過失相殺を主張され、賠償額が大きく減額される可能性があり、自賠責へ被害者請求をしたほうが多くの賠償金が認められる可能性が高い事案でした。)。遺言書で一切を相続させるとなっている場合に、交通事故の損害賠償金を誰が取得できるか問題がありましたが、Kさんが半分を取得する内容で合意ができ、遺留分以外に、約1000万円を取得できました。
・所感
他の共同相続人と交流がなく、また、遺産の資料も他の共同相続人がもっている場合、どのように交渉や協議を進めていってよいかわからないことがあります。遺産の資料としてどういったものが必要であり、どのように集めるかは知らない方も多いかと思います。また、交流のない相続人と話をすることが精神的負担である場合もあります。そういった場合には弁護士に交渉や手続等を依頼するメリットがあります。
10 連絡のとれない相続人と遺産分割協議ができた事例
相談者:Tさん
被相続人:兄(兄弟姉妹間の相続)
争点:連絡がとれない相続人がいる場合の遺産分割
・背景
Tさんの兄が亡くなり、兄には子がいなかったので、Tさんを始めとする兄弟姉妹が相続人となりました。兄弟姉妹の中には既に亡くなっている人もおり、代襲相続人も関わる案件(相続人は全員で5名)でした。そのうち代襲相続人の一人と連絡がつかないとのことで、調停にしたいと相談に見えました。
・弁護士のかかわり
Tさんは当初司法書士に依頼をして手続を進めていましたが、司法書士は遺産分割調停の代理人はできないため、遺産分割調停において代理人を立てるのであれば弁護士しかできません。そこで調停も視野にいれて当職が代理人として受任致しました。
・解決内容
もともと他の相続人とはおおよそ話合いができており、そこから調停をするのは時間もかかり迂遠であると感じました。そこで、なんとか調停外で分割協議ができないかと考え、連絡が取れない代襲相続人及びその代襲相続人の弟(この方も代襲相続人です)に当職から手紙を送付いたしました。その結果、連絡のとれない代襲相続人の弟から連絡があり、その弟が窓口となってくれ、調停にせずに分割協議をまとめることができました。
・弁護士の所感
連絡のとれない相続人がいたり、相続人が多数いたりする場合、遺産分割調停を利用することがあります。しかし調停には時間も労力もかかることから、その旨を丁寧に説明した文書を送付したことにより、何とか調停外で協議をまとめることができ、早期解決ができました。調停にした方が早期解決になる場合もありますが、どの時点で調停にするかどうかは難しい判断が必要であると感じました。
11 不仲なきょうだいとの遺産分割協議が成立した事例
相談者・Tさん
・背景
父が亡くなりましたが遺言は無く、きょうだい(姉弟)で遺産分割協議をする必要がありました。しかし、姉とは不仲で話ができないとのことで相談にみえました。
・弁護士の関わり
法律問題以前に、当事者同士では話が進まないという事例は多くあります。本件もそのようなケースであったため、当職がTさんの代理人として姉と協議することになりました。
・解決内容
当職にて遺産を調査、確定し、法定相続割合での分割を提案いたしました。遺産には不動産もありましたが、結果的に姉は不動産については不要とのことで、不動産はTさんに、それ以外は2分の1ずつ分けることで合意できました。
・所感
本件に関しては、相手の姉から、弟に代理人がついたことで弟と直接やりとりせずにすんでよかったとの言葉がありました。当事者同士で話ができない場合、弁護士が代理人になることで相手も冷静に話ができるようになり、スムーズに協議ができる場合もあります。
12 父の遺産相続(遺留分)と母の遺産分割を同時に解決した事例
相談者:Nさん
相続人:Nさん、兄、妹
・背景
Nさんの父及び母が亡くなり、父は遺言を作成しており、Nさんの遺留分が侵害されていました。また、父の遺言では相続人の一人である長男が遺言執行者となっており、手続面でスムーズに進んでいませんでした。また、母は遺言をしておらず、分割協議が必要でしたが、こちらも話が中断していました。
・弁護士の関わり
本人同士では協議が進まず、また、長男の遺言執行の進め方に不満があるとのことで、当職が代理人として受任し、協議をすることといたしました。
・解決内容
父の遺産相続に関しては、遺言執行者である兄の執行行為について、遺産に漏れがあったり、こちらが求める報告がされなかったりと、必ずしも適切ではなく、粘り強く交渉し、疑問点を解消していきました。また、遺留分についても不動産の評価で意見の相違があり、こちらも粘り強く交渉をしました。
母の遺産分割においても、Nさんが生前に贈与を受けた建物の評価で見解に相違があり、協議は難航いたしました。
父の遺産についての遺言執行、遺留分、母の遺産分割と、それぞれ別個の案件でも全体を見て解決をする必要があり、最終的には訴訟(遺留分)や審判(遺産分割)になった場合の結論を見越して、それに近い形で合意することができました。
・所感
当事者同士ではスムーズに話ができない場合に、弁護士であれば、訴訟や審判になった場合の結論を見据えて法的見地から協議をすることができます。そのため、相手が不当な要求をしている場合には毅然とそれを拒否し、妥当な結論へと導くことができます。
また、遺言執行については相続人の一人が遺言執行者になっていましたが、専門家ではなく、相続人が遺言執行者になった場合のデメリットがまさに顕在化した案件といえました。きょうだいの関係が不安の場合には、遺言執行者は第三者の専門家に依頼しておく方が将来の紛争予防の見地からは望ましいと言えます。
13 遺産分割で、いわゆる「負動産」の取得をせずに済んだ事例
相談者:Kさん
被相続人:父
被相続人との関係:子
・背景
Kさんの父が亡くなり、かつ、相手相続人の弟は無くなっており代襲相続で弟の息子(Kさんの甥)が相続人となっていました。協議段階では甥が主導して話を進めていましたが、その対応に不信感がありKさんにおいて対応に苦慮している中、甥が遺産分割調停の申立てをしてきました。
・弁護士の関わり
従前の甥の対応への不信感や調停になっていることから代理人として対応して欲しいとのことで受任しました。
・解決内容
遺産としては、預貯金はほとんどなく、不動産ばかりでした。その中には所有していても価値がなく、逆に処分に費用のかかる「負動産」があり、相手の甥はKさんに「負動産」を取得するよう求めてきました。Kさんとしては不動産所在地から遠方に住んでいることもあり、「負動産」を含めて一切取得したくないとの気持ちでした。調停で話がまとまらず審判になれば現物分割でKさんが「負動産」を取得する可能性もある事案でした。Kさんはもともと弟に対して債権を持っていたことから、その債権を利用し、相手の甥が弟の債務を承継しているとして、その債務を免除する代わりに、Kさんが「負動産」を取得しないで済む内容にて合意することができました。
・所感
相手相続人とうまく話しができない場合には、やはり代理人を選任して協議を進めるほうが、精神的負担や時間的負担を免れることができると思います。
また、近時は誰も相続を希望しない「負動産」の扱いをめぐり揉めることもあります。今回は相手に取得してもらくことで解決できましたが、どうしても誰も取得を希望しない場合、有償で引き取ってもらったり、不動産の国庫帰属制度を利用したりすることも視野に入れる必要があります。
14 遺産分割と同時に債務の処理も行った事例
相談者:Nさん
被相続人:父
被相続人との関係:子
・背景
Nさんの父が亡くなりましたが、公正証書遺言がありました。しかしながら、Nさんは他の相続人との関係が良好ではなく、かつ、父に対して借入金債務を負っていました。そこで、どのように手続を進めたらよいか相談に見えました。
・弁護士の関わり
公正証書遺言があり遺言執行者がいたので遺産分割の手続は大きな問題なく進めることができそうでした。しかしNの父に対する債務(父の債権)を他の相続人が相続することになっており、その債務額及び弁済方法が問題になりました。
・解決内容
債務額については資料をもとに間違いない額のみ債務として認めることで相手と合意できました。弁済方法についてはNさんが遺言により取得した不動産を売却することで売却代金から弁済することとし、売却手続及び売却代金からの弁済についても弁護士が関与して進めました。
・所感
公正証書遺言があっても、他の相続人との関係が良好でなかったり、遺産の売却等の処分がからんだりする場合には手続が煩雑になり、弁護士に手続を任せた方がよりスムーズに進めることができます。弁護士に依頼することで精神的な負担や時間的負担を軽減することができます。
15 被相続人が韓国籍で韓国の戸籍がなくとも不動産の相続登記ができた事例
相談者:Hさん
被相続人:父(韓国籍)
被相続人との関係:子
争点:被相続人の出生から死亡までの戸籍(韓国の戸籍)がなくとも相続登記ができるか
・背景
父がなくなり、父の姉(相談者の叔母)から、被相続人名義の不動産の相続手続を手伝うので不動産の売却ができたら代金の半分を支払って欲しいとの通知が弁護士を通じてきたため、叔母の協力がないと相続登記ができないのか、相談にみえました。
・弁護士のかかわり
叔母の通知の内容は叔母が韓国の戸籍を集めたり、不動産業者を手配したりしたので、その分費用を支払って欲しいとのものでした。依頼者は叔母にそのようなことを頼んだこともなく、叔母が勝手に行い、勝手に数百万円もの金銭の請求をしている不当請求案件でしたので、当職が代理人として関与することになりました。
・解決内容
不動産の相続登記をするためには、だれが相続人であるかを明らかにする必要があり、これは通常は被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得して証明します。本件では被相続人が韓国籍であり、韓国の戸籍を調べましたが、日本の住民票や外国人登録原票の内容と名前や生年月日に齟齬があり、韓国の戸籍上記載されている人物と被相続人の同一性が証明できませんでした。そこで法務局と協議したところ、相続人全員に「他に相続人がいないこと」を証明するための申述書の提出をするよう指示されました。依頼者以外の相続人は依頼者の妹のみであり、当職から申述書の提出を繰り返し依頼しましたが、すでに相続放棄をしており関わりたくないとのことで、妹が代理人を通じて申述書の作成を拒否してきました。法務局からは相続放棄をした相続人にも申述書を作成してもらう必要があるとのことで、妹の協力がないままでは相続登記ができない状況となりました。
そこで、登記の先例や裁判例を調べたところ、調書判決でもその判決理由中に「他に相続人がいないこと」が記載されていれば相続登記ができることが分かりました。
そこで相続放棄した依頼者の妹を相手として所有権確認請求訴訟を提起したところ、妹は相続放棄しているため請求を争わず、請求を認諾しました。妹が請求を認諾したため、認諾調書が作成され、その調書の中に「他に相続人がいないこと」が記載されており、それを法務局へ提出したところ、無事に相続登記が認めらました。
16 遺産である土地に設定されていた根抵当権設定登記を抹消できた事例
相談者:Kさん
被相続人:父
被相続人との関係:子
・背景
父が亡くなり、遺産として土地がありましたが、土地には30年以上前に設定されていた根抵当権設定登記が残っており、根抵当権者も死亡しているため、詳細もわからず、どうしてよいかわからないとのことで相談に見えました。
・弁護士のかかわり
事情を聞くと、根抵当権者には相続人が数名いること、債務の内容もわからないこと、父が債務の返済をしていた形跡もないとのことでした。根抵当権が設定されてから30年以上経過しており、債務の消滅時効を理由に根抵当権設定登記を抹消できると考え、当職が代理人として受任しました。
・解決内容
まずは戸籍等で根抵当権者を特定し、被担保債権(根抵当権設定の原因となっている債務)が時効により消滅していることを理由に、根抵当権設定登記の抹消に協力をしてほしい旨の連絡をしました。根抵当権者の相続人4名中、3名は協力してくれるとのことでしたが、1名からは明確な回答をもらえませんでした。そこで協力すると言ってくれた3名には事情を説明した上で、根抵当権設定登記抹消登記手続請求訴訟を提起いたしました。訴訟ではこちらの消滅時効の主張が認められ、根抵当権設定登記の抹消を命じる判決を得ることができました。そして、判決に基づき無事に根抵当権設定登記を抹消することができました。合わせて、土地について相続人で分割協議を行い、相続登記もいたしました。
・所感
本件では抵当権者の相続人の調査、交渉、訴訟提起という流れで、弁護士でなければ解決できない事案であったと言えます。遺産である不動産に古くからの抵当権が設定されている場合、債務を返済せずとも抵当権を抹消できる場合がありますので、弁護士にご相談ください。
17 関係の良くない母と姉を相手に遺産分割協議が成立した事例
相談者:Aさん
被相続人:父
相続人:Aさん、母、姉
・背景
父が亡くなり、当初は当事者同士で遺産分割の手続を行っていました。しかし、途中から話がうまく進まないようになり、母や姉からは法定相続での分割を拒否されるようになりました。そこで困ったAさんが相談に見えました。
・弁護士の関わり
Aさんは直接母や姉とやりとりをしたくないとのことで、弁護士がAさんの代理人として相手と協議をすることにいたしました。
・解決内容
本件は遺言がないため、最終的には法定相続割合での分割となります。それを踏まえてこちらの希望する分割案を相手に伝え、協議をしました。その結果、こちらの希望案で合意ができましたので、弁護士が遺産分割協議書を作成し、その後、それに沿って双方にて遺産の分割手続を行い、無事に手続が完了しました。
・所感
感情的な理由等から相続人同士での話合いが難しい場合が多々あります。その場合でも弁護士であれば法律の専門家として法律を踏まえて相手と協議等を行い、解決まで導くことができます。相手は代理人を立てませんでしたが、こちらが代理人を立てたことで話がスムーズに進み、最後は相手からも解決できたことを感謝されることとなりました。